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黒字なのに、お金が消えていく。

帳簿は黒字。確定申告は通る。けれど通帳の残高は毎月減っていく。
1億円の物件で、減価償却が切れる6年目に「実際の手取り」がマイナスへ転落する瞬間を、購入から10年分の収支で追いかけます。

前提とする物件スペック

物件価格
1億円
家賃年収
1,000万円表面利回り10%
運営経費
家賃の30%NOI 700万円
借入条件
1億円フルローン / 元利均等 / 金利2% / 20年
減価償却
建物全額を5年で定額償却年2,000万円・6年目以降ゼロ
税率
30%所得税+住民税の合算想定

10年分の手取り推移

その年の実際の手取り 出血ゾーン(手取りマイナス) デッドクロス 6年目
単位:万円。表の「見かけの手取り」(家賃−経費−返済)は10年間ずっと +93万で一定。けれど6年目から税金が新たに発生し、「実際の手取り」は −71万へ転落、その後も年々悪化赤列=6年目(デッドクロス発生)

デッドクロスの前と後

① 節税期
1〜5年目

減価償却2,000万円が大きく効き、帳簿上は赤字で税金ゼロ。実際の手取りは毎年+93万円で安定する、最も穏やかな5年間。

② 出血期
6年目以降

6年目に償却が切れて帳簿利益が跳ね上がり、税金が発生。実際の手取りがマイナスへ転落、年々悪化。ローン完済まで耐える局面が始まる。

この物件をどう読むか

1. 6年目に何が起きたのか

1〜5年目は、建物の取得価格1億円を「毎年2,000万円ずつ経費として計上できる」減価償却が効いていました。家賃収入から経費と利息を引いた利益にこの2,000万円をぶつけると、帳簿は赤字。赤字には税金がかからないので、手元には毎年+93万円のキャッシュが残ります。

ところが6年目に償却が切れます。経費の柱が1本まるごと消えるので、帳簿利益が一気に跳ね上がり、初めて税金が発生します。家賃も返済額も何も変わっていないのに、税金が新たに引かれるぶん、実際の手取りは+93万円から−71万円へ転落します。これがデッドクロスです。

2. 出血は1年では終わらず、年々悪化する

最も恐ろしいのは、この出血がたった1回のイベントではないことです。

償却が切れた翌年も、その翌年も、税金は毎年発生し続けます。返済額は変わらないのに利息の比率が年々下がるので、税金はむしろ増えていき、実際の手取りは−71万円 → −74万円 → −77万円 → −80万円 → −82万円年々悪化。グラフの赤い谷の部分です。

表の「見かけの手取り」を見ると、家賃から経費と返済を引いた値はずっと +93万円 で変わりません。「これだけ残るはず」と思い込んだまま購入し、6年目に通帳の減りが始まって初めて気づく ― これがデッドクロスの怖さです。

この出血はローンが完済するまで続きます。物件を買うとき、家賃や利回りより先に、この谷を持ちこたえる現金があるかを自問する ― それがデッドクロスから学ぶ最大の教訓です。

※本ページの数値は、デッドクロスの仕組みを理解するための試算です。前提:運営経費=家賃の30%、税率30%、元利均等返済、建物価格全額を5年で定額償却と仮定しています。実際は土地建物の按分、経費率、税率、空室・修繕等により異なります。具体的な投資判断や税務は専門家にご相談ください。