CASE LAW / 賃料と契約
サブリースの家賃は、鑑定額どおりに決まる?
不動産鑑定士 まーさん(@ma_kanteishi)/更新 2026-10-29
サブリース会社から減額を求められても、鑑定額がそのまま新しい家賃になるとは限りません。最高裁 平成15年10月21日判決では、原審が減額を認めた部分を最高裁が破棄し、引渡し前の第1次請求による減額は認めず、第2次請求は審理し直すよう差し戻しました。
事件の骨組み
建物のうち契約で定めた部分を、不動産会社が一括で借りて転貸する契約です。貸主は資本金3億円の倉庫会社、借主は資本金867億円余の不動産会社でした。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 平成3年7月9日 | 契約。賃料は年18億円、2年ごとに8%の自動増額、4年ごとの見直しでも直近1年の賃料を下回らない約束 |
| — | 借主から預託された敷金234億円の全額を、貸主が建築代金と設計監理費に充てた |
| 平成7年2月6日 | 借主が年10億円への減額を請求(第1次) |
| 平成7年2月28日 | 建物完成・引渡し |
| 平成8年7月3日 | 借主が8月1日以降 年7億2,418万5,000円への減額を請求(第2次) |
4つの数字が並んだ
| 年額 | 平成7年3月1日 | 平成8年8月1日 |
|---|---|---|
| 約定 | 18億円 | 18億円 |
| 借主の請求 | 10億円 | 7億2,418万5,000円 |
| 鑑定 | 12億2,308万8,000円 | 10億7,943万6,000円 |
| 原審 | 16億0,769万6,000円 | 15億5,981万2,000円 |
| 最高裁 | 第1次請求による減額は認めない | 差し戻し |
原審=東京高裁。鑑定は訴訟の中で行われた鑑定の結果。
原審は、鑑定の結果を「そのまま相当賃料とすることは公平に反し」るとして、約定の18億円と鑑定額の差を3分し、その1を貸主、残りを借主の負担とする方法で相当賃料を決めました。
最高裁が判断したこと
- サブリースにも借地借家法32条が適用される。自動増額特約があっても、それだけでは同条の適用を排除できない(原審の判断を是認)
- 当初の賃料を決めた事情は、重要な事情として十分に考慮される。賃料額と自動増額特約は、貸主が多額の資本を投下する前提になった、契約の重要な要素だったから
- 借地借家法32条1項によって、契約に基づく使用収益の開始前に当初賃料の増減を求めることはできない。第1次請求は引渡し前だったので、これによる減額は認められず、平成7年3月1日から平成8年7月31日までの賃料額の確認請求について、借主の控訴が棄却された
- 平成8年8月1日以降は差し戻し。第1次請求による減額を認める前提が崩れたため、第2次請求の当否と相当賃料額を更に審理させる
3分の1で按分する方法は原審の処理です。最高裁がこの按分を正しいと確定したわけではありません。
鑑定士の読み
この事件では原審が鑑定額に調整を加えましたが、最高裁が確定したのはその調整額ではなく、第1次請求による減額を認めないことと、第2次請求を再審理することです。原審の16億円台という数字は、最高裁の判断を経て残った額ではありません。
最高裁が考慮を求めたのは、賃料と自動増額の約束を前提とする収支予測の下で、借主の敷金234億円を建築資金として投下したという契約の成り立ちです。サブリースの賃料を争うとき、契約時点の賃料決定の経緯が正面の論点になります。
請求の時期だけで結論が分かれました。第1次請求は、内容を審理される前に、引渡し前だったという一点で減額の効果を否定されています。
いま確かめること
- 契約書の賃料・自動増額特約・見直し条項の文言
- 当初の賃料を決めたときの資料(収支計画・当時の周辺家賃の資料)
- 引渡し日と、減額・増額を請求した日
- 敷金・建築資金・借入の返済予定
自分の用件で何を確かめるかは、3つ選ぶだけで分かります。
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