CASE LAW / 価格と権利
共有不動産を一人が取得するには、買取価格以外に何が要る?
不動産鑑定士 まーさん(@ma_kanteishi)/更新 2026-10-29
裁判で共有不動産を一人に取得させ、他の共有者に持分の価格を払わせる場合、価格の適正さに加え、その人の支払能力も確かめます。最高裁 平成8年10月31日判決は、支払能力を確定していなかったため、共有物分割の部分を破棄し、差し戻しました。
事件の骨組み
- 3人が持分3分の1ずつで土地建物を買い戻した。その後の相続で、持分は 9/18・1/18・1/18・1/18(4人)と 6/18(1人)に
- 建物が土地いっぱいに建ち、構造が一体で区分所有にできない=現物では分けられない
- 6/18 の共有者は、昭和48年からこの建物に住み、隣の建物で薬局を営んで生活してきた。他の共有者は別に住んでいて、競売を希望
- 原審の鑑定で、不動産の評価額は826万3,000円。競売してもこれより高く売れる可能性は低い
原審と最高裁
| 段階 | 判断 |
|---|---|
| 第一審 | 競売して代金を分ける |
| 原審 | 住んでいる共有者の単独所有にし、他の共有者へ持分の価格を賠償させる(広島高裁) |
| 最高裁 | この分け方自体は許される。しかし、賠償金を払う力があるかを確定していないので、共有物分割の部分を破棄し、差し戻す |
他の共有者の持分の価格は、鑑定で合計550万円余でした。原審は、取得する人がこれを払えるかを何も確定していませんでした。
一人が取得できる条件(判決が挙げたもの)
- その共有者に取得させるのが相当であること(共有物の性質・形状、共有になった経緯、共有者の数と持分の割合、利用状況、分けた場合の経済的価値、分け方についての希望とその合理性などを総合して)
- 価格が適正に評価されていること
- 取得する人に支払能力があること
- 他の共有者が持分の価格を受け取ることにしても、共有者の間の実質的な公平を害しないこと
今は民法258条2項2号に、この分け方(共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法)が書かれています。
鑑定士の読み
鑑定で持分の価格を示しても、取得者がその賠償金を支払える事実まで確定したことにはなりません。価格の適正さと支払能力は、別々の条件として確かめられます。
原審の鑑定では競売で評価額を上回る見込みが低いとされても、取得者が持分価格合計550万円余を支払える事実を確定したことにはならず、最高裁はその欠落を残した分割を認めませんでした。
生活の本拠であることは取得の相当性を支えましたが、価格の適正さと支払能力を含む条件をそろえなければ、この方法での分割は認められませんでした。
いま確かめること
- 登記簿で持分と共有者を確定する(相続で増えていないか)
- 誰が使っているか、いつから、何に使っているか
- 現物で分けられるか(建物の配置・区分所有にできるか)
- 取得する人の資金の裏付け(預金・融資の見込み)
- 相手が示した価格が、全体の価格か持分の価格か
自分の用件で何を確かめるかは、3つ選ぶだけで分かります。
用件から確認する